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横須賀簡易裁判所 事件番号不詳 判決

主文

被告人両名はいづれも無罪。

理由

本件公訴事実は

第一、被告人黒上ツカは肩書居宅の部屋を被告人今井文子が不特定の外国人を相手として売春することの情を知つて被告人今井文子に対し

(一)  昭和三十年六月十六日頃貸与し

(二)  同月二十一日頃貸与し

(三)  同月二十五日頃貸与し

以つてそれぞれ売春の場所を提供し

第二、被告人今井文子は

(一)  昭和三十年六月十六日頃被告人黒上ツカの肩書居宅に於て不特定の外国人を相手として金千円の報酬を得て性交をなし

(二)  同月二十一日頃右同所に於て不特定の外国人を相手として金八百円の報酬を得て性交をなし

(三)  同月二十五日頃右同所に於て不特定の外国人を相手として金八百円の報酬を得て性交をなし

以つてそれぞれ売春し

たものであると謂うにあるが被告人今井文子の司法巡査、司法警察員、検察官副検事に対する各供述調書及同人に対する当裁判所の証人尋問調書の各記載並に同人の当公廷に於ける供述を綜合考究すると同人が相手とした外国人は前記の三回とも通称ジミーと呼ばれる米陸軍の将校であつて右ジミーは被告人今井がかつてオンリー(妾)になつていた米海軍将校マークソンの友人であつた為、兼ねてより被告人今井と知合の仲であり、昭和三十年六月十六日頃被告人黒上ツカの居宅で右ジミーと会つた際同人より前記マークソンが帰国したから自分のオンリー(妾)になつてくれと申込まれ被告人今井も又オンリー(妾)になつても良いと言う考えのもとに結局性関係に及びその後同所に於て同月二十一日頃と同月二十五日頃の二回に亘り会合を重ねたものでありその都度被告人今井が右ジミーより受領した部屋代以外の金員は被告人今井より要求したものではなく右ジミーより任意に小遣銭として支給されたものである事実を認めることが出来その他本件に表われた全証拠によつても右金員が性交の報酬として支払われ或は約束されたと謂う事実はこれを認めることが出来ない(此点につき被告人今井の司法巡査に対する供述調書の記載に同被告人の供述として判示第二の(一)については千円(二)については八百円をくれ(三)については部屋代八百円ともで千六百円の契約で性交したとあるが前の二回については単に相手のジミーよりくれたものであると言うのであつて性関係の報酬として支払われたものとの記載はなく又同人の司法警察員に対する供述調書の記載に同人の供述としてその時ジミーがくれた千円は性関係を結んだ代としてくれたものと思うとあるが同供述調書中にもその千円は自分より要求したものではなくジミーがくれたから受取つたものであると述べて居るのであつて同被告人の右供述を取つてそれが性関係の報酬として支払われ或は約束されたものであると断ずることは出来ない。)

而して横須賀市風紀取締条例に謂う売春とは報酬を受け又は受ける約束で不特定の相手方と性交することを謂うのであるが被告人今井の判示行為についてはその三回とも相手方ジミーより報酬を受け又は受ける約束をしたと謂う点について前認定の如くその証明が十分でないし又被告人今井の売春行為を前提としての被告人黒上ツカの判示場所提供の行為も右の点につき犯罪の証明が十分でないものと謂わなければならない。

尚被告人今井文子に対する予備的訴因たる

被告人今井文子は

(一)  昭和三十年六月二十一日頃被告人黒上ツカの肩書居宅に於て不特定の外国人より報酬を受ける約束で性交を約し

(二)  同月二十五日頃右同所に於て特定の外国人より報酬を受ける約束で性交を約し

以つてそれぞれ売春の約束をしたとの事実についても前同様の理由により犯罪の証明を欠くものと謂わなけれなばらない。

以上の理由により被告人両名に対し刑事訴訟法第三百三十六条に従いいずれも無罪の言渡をした次第である。(昭和三二年四月一〇日横須賀簡易裁判所)

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